企業側が受ける労働問題の相談についての説明(社内トラブル)

【パワハラとは】

職場で「パワハラ」(パワーハラスメント)という言葉が珍しくなくなった今日において、パワハラという言葉についての受け止め方は、個人によって様々です。
その理由は、この言葉が対象としている内容は、職場の些細な言葉のやり取りを冗談めかして取り上げるものから、いわゆる、職場いじめといわれる深刻なものまで幅広いということです。
些細な問題だと捉える人にとっては、個人的に問題だということになりますが、深刻なパワハラを受けている人にとっては、重大な人権侵害だということになります。
 訴えの内容は、「上司が信頼できない」「同僚とのコミュニケーションがうまくいかない」という日常の人間関係の悩みから「上司から叱責される日々が続き職場に行く気になれない」「同僚とうまくいかず、職場に行きづらくなった」などという深刻なものまで幅広いものです。
 一見すると、この訴えの内容は、個人の事情にように思えますが、本質は個人を超えた職場環境に問題があるように思えます。
 その職場環境をみると、職場が格段にストレスフルになってきているということです。仕事の量が格段に増え、スピードも上がり、しかもミスが許されない職場環境がもたらす緊張した人間関係です。

【コミュニケーションギャップが引き起こす】

 上司が部下の指導として厳しい言動をとることがあります。しかしながら、上司と部下のコミュニケーションのギャップから、その対応は、あるときには部下を職場不適応に追い込み、メンタルな問題を引き起こしてしまい、しいては自殺を招いてしまうこともあるということです。この状態までいくともはや上司の管理監督責任にとどまらず、会社の体制として会社が安全配慮義務違反として民事上の責任を問われうることになります。
 そのような結果を避けるためにも、当事者間のコミュニケーションギャップをシステム的に解決することが重要だと思われます。
 どんなトラブルでも、間に入った第三者からの適切な指摘やアドバイスで、両当事者が徐々に冷静になって妥協点を見いだせるということです。

【4つの解決方法】

(1)通知
相談者からの被害の申し立てにより、行為者に対して申立てがあったこととその内容を注意喚起として通知し、反省を促すものです。
<ポイント>
原則として、相談者が特定されないように匿名で行い、行為者本人だけを対象に通知を行います。通知の内容は、申し立てられた被害内容を行為者に提示して注意を促すことを目的とした一方的な通知で完結します。
(2)調整
相談者及び行為者双方の主張を公平な立場で危機、調整し和解させることで問題解決を図ります。
    <ポイント>
相談者が調整を求める場合、調整委員会を設置して両当事者からのヒアリングを重ねて調整を行う。目的は、両当事者の円満和解を目指して、双方の意見を調整すること、つまりコミュニケーションギャップを解消することです。円満な和解が成立した場合、委員会立会による和解文書を作成します。あくまで、自主的な解決を目的とします。
(3)調停
調整で解決が図れなかった場合、相談者の申立て内容に沿って相談者の権利回復を目的として当事者間の協議を援助し、調停者の意向も入れて解決を図るものです。
   <ポイント>
 調停委員会の和解文書を作成するところまでは、調整の場合と同様です。もっとも、自主的な解決ができなった場合、委員会は独自に調停案を作成し、両当事者に提示します。 
(4)調査
調停で両当事者が合意に至らなかった場合、相談者の申立てによって行為者の処分など必要な措置を目的に調査活動などを行う物です。
    <ポイント>
調査委員会は、両当事者や関係者からヒアリングを重ね調査を行います。委員会の公正・中立性・客観性を担保するために委員会の構成員を社外の人にすることもあります。委員会は調査結果をまとめ、環境改善や処分に関する提案を会社の関係機関に行います。会社は委員会の提案をもとに改善や処分を行います。

【最後に】

 コミュニケーションギャップが生じた以上、両当事者だけでそのギャップを埋めることは困難であります。コミュニケーションギャップが大きくなる前に仲介者となる第三者の誠意ある態度が重要になってくると思います。具体的には、①当事者の話をよく聞き、②相手を言いくるめようとしない、③説教しない、④ゆったりとした気持ちのもてる場所と時間を選ぶ、⑤白紙で臨む、⑥相談者との上下関係を利用しない、⑦相手の自己決定するのをゆっくり待つなどの心構えが必要ではないでしょうか。