パーソナリティ障害を持つ人が身近にいる、または関わることがあり、その人の気持ちや行動を理解し、良好な関係を築きたいと考えている方も少なくないでしょう。
日々の生活の中で、感情の起伏が激しかったり、自己中心的と思われる発言があったりすると、戸惑いやストレスを感じることがあるかもしれません。
今回は、そうした状況下でどのように接すれば良いのか、具体的な方法と、その背景にある考え方をご紹介します。
パーソナリティ障害の人の気持ちを理解するには
共感ではなく受容の姿勢で接する
パーソナリティ障害を持つ人の気持ちを理解するには、まず「共感」ではなく「受容」の姿勢を持つことが重要です。
共感とは、相手の感情を自分のものとして理解することですが、パーソナリティ障害の場合、その感情の背景にある複雑な要因を理解せずに共感しようとすると、かえって誤解を招いたり、相手の感情を悪化させたりする可能性があります。
一方、受容とは、相手の感情や考え方をそのまま受け入れることであり、理解しようと努めることとは異なります。
相手の感情や行動を、良い悪いと判断することなく、まずは事実として受け止め、その上で、どのように対応していくかを考えることが大切です。
例えば、相手が感情的に怒りを表現した場合、その怒りの原因を深く探ろうとするのではなく、まずは「怒っているんだな」と受け止め、落ち着いて対応することを心がけましょう。
相手の特性を理解し個人差を認識する
パーソナリティ障害は、様々な種類があり、それぞれに異なる特性を持っています。
そのため、全てのパーソナリティ障害を持つ人に同じように接することが有効とは限りません。
例えば、境界性パーソナリティ障害の人は、不安定な感情や人間関係に苦しむ傾向がある一方、自己愛性パーソナリティ障害の人は、自己中心的で、他人の感情を無視する傾向があります。
それぞれの特性を理解し、個人差を認識した上で、個々の状況に合わせた対応をする必要があります。
そのため、相手の行動や発言の背景にある特性を理解しようと努めること、そして、その特性を踏まえた上で、どのようにコミュニケーションをとるべきかを考えることが重要です。
専門書や相談機関などを活用して、より深く理解を深める努力も必要となるでしょう。
決めつけやレッテル貼りをしない
パーソナリティ障害を持つ人に対して、決めつけやレッテル貼りをしないことも重要です。
例えば、「いつも自己中心的だ」「感情的になりやすい」といったレッテルを貼ってしまうと、その人の行動を偏った視点で見てしまうことになり、建設的なコミュニケーションを妨げる可能性があります。
その人の行動は、パーソナリティ障害の特性によるものだけでなく、その時の状況や感情、過去の経験など、様々な要因が複雑に絡み合って生じていることを理解する必要があります。
そのため、その人の行動を、その人の全体像の一部として捉え、その行動の背景にある要因を丁寧に探り、理解しようとする姿勢が求められます。
具体的な接し方と言葉遣い
穏やかで肯定的な言葉を選ぶ
穏やかで肯定的な言葉を選ぶことは、パーソナリティ障害を持つ人とのコミュニケーションにおいて非常に重要です。
命令形や否定的な言葉は、相手の不安や警戒心を高め、反発を招く可能性があります。
例えば、「○○しなさい」ではなく「○○してみませんか?」、「○○はやめてください」ではなく「○○するのは少し難しいかもしれませんね」といったように、相手に選択の余地を与え、肯定的な表現を用いることで、より円滑なコミュニケーションを図ることができます。
さらに、相手の努力や頑張りを認め、肯定的な言葉を積極的に使うことで、相手の自尊心を高め、良好な関係を築く助けとなります。
具体的な指示や提案をする
抽象的な指示や提案は、パーソナリティ障害を持つ人にとって理解しにくく、混乱を招く可能性があります。
具体的な指示や提案をすることで、相手は自分が何をすべきか明確に理解でき、不安や混乱を減らすことができます。
例えば、「部屋を片付けてください」ではなく、「まずは、テーブルの上の書類を整理してみましょう」といったように、具体的なステップを提示することで、相手に安心感を与えることができます。
そして、一つひとつのタスクを達成していくことで、自信や達成感を得る機会も与えることができます。
一貫性のある態度を保つ
パーソナリティ障害を持つ人にとって、一貫性のない態度や言動は、大きな不安や混乱をもたらす可能性があります。
そのため、常に同じように接し、約束を守ること、そして、言葉と行動の不一致がないように注意することが重要です。
例えば、今日言ったことと明日言ったことが違うなど、矛盾した発言があると、相手は混乱し不信感を抱いてしまう可能性があります。
そのため、常に一貫性のある態度を心がけ、信頼関係を築くことが大切です。
境界線を明確に伝える
パーソナリティ障害を持つ人と接する際には、自分の境界線を明確に伝えることが重要です。
自分の感情や限界を相手に伝えることで、相手は自分の行動を適切に制御し、関係を良好に保つことができるようになります。
例えば「私は、○○されるのは辛いので、やめてほしい」といったように、具体的に伝えることで、相手は自分の行為が相手にどのような影響を与えているかを理解しやすくなります。
また、自分の境界線を尊重しない行動に対しては、毅然とした態度で対応することも必要です。
まとめ
パーソナリティ障害を持つ人との良好な関係を築くためには、共感ではなく受容の姿勢で接し、相手の特性を理解し、決めつけやレッテル貼りをしないことが重要です。
具体的な接し方としては、穏やかで肯定的な言葉を選び、具体的な指示や提案をし、一貫性のある態度を保ち、境界線を明確に伝えることが有効です。
これらの点を意識することで、日々のコミュニケーションがより円滑になり、相手との信頼関係を構築できるでしょう。
ただし、パーソナリティ障害は複雑な症状であり、この記事で紹介した内容はあくまでも一般的なアドバイスです。
より専門的な知識やサポートが必要な場合は、専門機関への相談をご検討ください。
