「会議で話すのが怖い」「電話でうまく言葉が出てこない」「名前や決まった単語でどもってしまう」――。
子どもの頃からどもり(吃音)があり、大人になっても悩み続けている方は少なくありません。あるいは、社会人になってから急に話しづらくなり、自分が吃音なのではないかと不安になるケースもあります。
「治るの?」「仕事に支障が出ているけど、どうしたらいいの?」といった疑問や不安を抱えている方へ。
この記事では、どもり(吃音)の大人における特徴、治し方や緩和方法、日常で実践できる対策を詳しく紹介します。吃音は「治らないもの」と思い込んでいませんか? 実は、適切なアプローチで大きく改善した例も多数あります。自分の声に自信を持てるようになるヒントをお伝えします。
なぜ大人になってもどもるのか?吃音のメカニズムと社会的背景
■吃音とは?
吃音(きつおん)とは、言葉を発する際にスムーズに出せず、繰り返し(例:「お、お、おはよう」)、引き伸ばし(例:「おーーはよう」)、詰まり(例:「…おはよう」)といった症状が現れる発話障害です。俗に「どもり」とも呼ばれています。
■子どもと大人で異なる吃音の性質
子どもの吃音は、言語発達の途中に一時的に起こるケースもありますが、大人になっても残っている場合、本人の「話すことへの不安」「恥ずかしさ」が症状を悪化させてしまう傾向があります。
■大人の吃音の特徴
・電話応対や会議など「注目される場面」で特に出やすい
・特定の言葉(名前、数字など)で繰り返し出る
・「またどもるのでは」と考えることでさらに悪化
・人間関係のストレスやプレッシャーで増強する
■なぜ治りにくいと思われがちか?
多くの人が「性格の問題」「恥ずかしい癖」と誤解し、適切な支援を受けないまま大人になってしまいます。そのため、「もう治らない」と諦めがちになりますが、実際には発話訓練や心理療法などで大きく改善する例もあります。
■事例紹介:Bさん(名古屋・40代男性)
営業職で吃音に悩んでいたBさんは、電話やプレゼンのたびに言葉が詰まり、自己評価が低下。オンラインで言語聴覚士の指導を受け、呼吸法や音読練習を続けた結果、半年後には滑らかに話せる場面が増え、現在は後輩指導も任されるように。
大人の吃音を改善する8つの実践的アプローチ
- 1. 腹式呼吸を習得する
【理由】どもりやすい場面では呼吸が浅くなりがち。
【方法】1日3回、4秒吸って6秒吐く腹式呼吸を繰り返す。
【効果】呼吸が安定し、発話時の緊張が軽減される。 - 2. 言語聴覚士のサポートを受ける
【理由】専門家による発話訓練が効果的。
【方法】医療機関やオンラインでST(言語聴覚士)に相談。
【効果】一人では気づけない改善ポイントを客観的に把握できる。 - 3. 話す内容を事前に準備する
【理由】不安による緊張を緩和できる。
【方法】発表や会議では、話す文章を紙に書き出す。
【効果】頭の中が整理され、言葉が出やすくなる。 - 4. 「詰まりやすい単語」を言い換える技術を磨く
【理由】言い換えは吃音の回避策として有効。
【方法】「ありがとうございます」→「どうもありがとう」など。
【効果】会話が止まらず、流れを保ちやすくなる。 - 5. 話すスピードを意識してゆっくりにする
【理由】早口はどもりやすさを助長。
【方法】1語ごとに「区切って話す」練習を毎日5分。
【効果】リズムが整い、どもりが減少する。 - 6. 「どもってもOK」というマインドを持つ
【理由】どもりへの恐怖が悪循環を生む。
【方法】「多少つまっても内容が伝わればOK」と自分に許す。
【効果】プレッシャーが軽減し、逆に滑らかになる場面も。 - 7. 吃音当事者のグループに参加する
【理由】共感・励ましが心の支えになる。
【方法】SNSや市区町村の自助会、吃音協会を検索。
【効果】「自分だけじゃない」と感じられ、継続的な改善意欲に。 - 8. カラオケや音読で話す練習をする
【理由】歌や朗読では吃音が出にくい特性を活用。
【方法】毎日1曲、1ページ朗読する時間を設ける。
【効果】発声への自信がつき、普段の会話にも好影響が出る。
■やってはいけないNG行動:話すことを避け続ける
怖くて会話自体を避けるようになると、吃音がより強化される恐れがあります。「少し話す」「少し練習する」ことを日常に組み込むことが改善の第一歩です。
Q&A:吃音に悩む大人がよく抱える疑問に答えます
Q. 「吃音は本当に治るんですか?」
A. 完全に消えるケースもあれば、「軽くなる・出にくくなる」方向で改善する人も多くいます。治療や訓練によってコントロールできる症状と捉えると前向きに取り組めます。
Q. 「職場に打ち明けるべき?」
A. 状況によりますが、理解ある上司や人事に伝えることで配慮を受けやすくなります。伝え方が不安なら、専門機関や支援者に同行してもらうのも有効です。
Q. 「急にどもりがひどくなったのはなぜ?」
A. ストレスや疲労、環境の変化などが誘因となって一時的に悪化することがあります。環境を整えつつ、落ち着いたタイミングで改善に向けて動き出すのがよいでしょう。
Q. 「大人になってから始めても遅くない?」
A. まったく遅くありません。40代・50代から訓練を始めて改善した人も多数います。年齢よりも「やってみること」が重要です。
まとめ:どもりは“変えられる”課題。自分の話し方に自信を持とう
どもり(吃音)は、決して「恥ずかしいこと」でも「性格の弱さ」でもありません。話すことに不安を感じるのは当然ですが、適切な方法で練習を重ねることで、驚くほど改善するケースがあるのです。
大人になってからでも、「発声練習」「呼吸法」「環境調整」「マインドチェンジ」などを積み重ねることで、自信を持って話せるようになる人がたくさんいます。
まずは「自分の吃音を否定しないこと」から始めてみてください。そして一歩ずつ、自分らしい話し方を取り戻していきましょう。未来の自分は、今のあなたの行動次第で大きく変わります。