「裁判」と「あっせん」の違いを社労士が説明!

職場のトラブルを解決するには、「裁判」や「あっせん」といった方法があります。
これまでは職場のトラブルを解決するには、裁判で解決するのが一般的でした。裁判による解決は多額の費用や時間を費やし、裁判内容が一般公開されますので、労使間の紛争当事者が互いに辛い思いをすることも考えられます。
このため、労働問題において裁判による解決はあまり有効に機能してこなかったと言えます。
そこで、裁判をせず、話し合いによって、自主的にトラブルを解決しようという制度(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律)が平成13年に成立し、労使間のトラブルを簡易・迅速・低廉・円満に解決(あっせんによる解決)することができるようになりました。最近では、裁判によらない解決手段として裁判外紛争解決手続きが活用されています。
裁判外紛争解決手続はADRと呼ばれ、行政型ADRと民間型ADRがあります。労働問題の行政型ADRとしては、各都道府県労働局に設置されている紛争調整委員会と都道府県労働委員会などの個別労働関係紛争解決機関があります。また、民間型ADRとしては、全国社会保険労務士会連合会及び各都道府県社会保険労務士会に設置されている社労士会労働紛争解決センターがあります。
社会保険労務士のなかでも、特別研修を修了し、紛争解決手続代理業務試験に合格した者は、特定社会保険労務士として、このあっせんに関する業務に関する手続の代理業務(紛争解決手続代理業務)をすることができます。

特定社会保険労務士が行うあっせんには以下のものがあります。

・厚生労働大臣が指定する団体が行う裁判外紛争解決手続の代理
(紛争価額が120万円を超える事件については弁護士との共同受任が必要となります)
・個別労働関係紛争解決促進法に基づき都道府県労働局が行うあっせんの手続の代理
・男女雇用機会均等法、育児・介護休業法・障害者雇用促進法及びパートタイム労働法に基づき都道府県労働局が行う調停の手続の代理
・個別労働関係紛争について都道府県労働委員会が行うあっせんの手続の代理
・上記代理業務には、依頼者の紛争の相手方との和解のための交渉及び和解契約の締結の代理を含む。
あっせん制度は、個々の労働者と使用者との間で発生した労働条件や雇用に関するトラブルで、双方の主張が対立し自主解決が困難となった事案に関し、あっせん委員が第三者の立場に立って、当事者双方からの話を聴き、問題点を整理の上、助言等を行い、歩み寄りによる解決の援助を行なう制度です。

裁判とあっせんについてまとめますと、

・裁判に比べて時間と費用がかからない
裁判の場合、比較的長い時間を要しますが、あっせんの場合、解決までの時間が早く、費用は裁判に比べて安く利用できます。
・非公開
あっせんの場合、裁判と異なり非公開なのでプライバシーが保護されます。
・相手方と顔を合わさずに済む
あっせん当日は労働者と会社側は別の部屋に待機し、専門家があいだに入り互いの主張を伝えます。
・不利益取扱いの禁止
労働者があっせんの申請をしたことを理由として、事業主が労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されています。

労働問題を解決しようと思う場合、裁判という方法が思い浮かぶかもしれませんが、必ずしもそれだけではありません。あっせんは裁判に比べ費用を安く抑えられる可能性があり、解決までに時間をかけずに済み、労使お互いが納得した上での解決が図れる可能性が高いです。労働問題が起きないようにすることが一番だとは思いますが、万が一に備えて、裁判以外の方法もあるということを覚えておいて頂ければと思います。