使用者と労働者の間でトラブルが発生し、労使間では解決出来なかった場合、裁判になります。その際は、どちらかもしくは両者が弁護士にお願いすることになります。
しかし、その前に個別労働関係紛争で解決出来ることをご存知でしたでしょうか?
個別労働関係紛争における「あっせん」は、裁判よりも手続きが少なく、費用も安くなっています。
「あっせん」は、特定社会保険労務士(特定社労士)があっせん委員となることが出来ます。

それでは、どのような事態になった際に紛争に発展し、「あっせん」の対象になるのでしょうか?

例1)
・労働者が突然、会社から解雇されたとき
・労働者が働いた分の給与が、会社から支払われないとき
・労働者が使用者から退職するように勧められたとき
・労働者が残業をしたにもかかわらず、会社から残業代(割増賃金)が支払われないとき
・労働者が退職するときに、当該労働者が退職金支払いの対象者になるにもかかわらず、会社から退職金が支払われないとき
・労働者が育児休業や病気療養などの復帰後、会社から部署の異動を命じられ、もとの部署に復帰したいが戻れないとき
・労働者の同意なく、使用者が一方的に基本給などを減給したとき

例2)
・経営者の社員との退職問題が起こったとき
・管理職と社員がトラブルを起こしたとき
・経営者が社員から未払い残業代を請求されたとき
・遅刻・欠勤が多いなど問題社員に対してトラブルが起こったとき

などです。

上記のように、「あっせん」の対象となる労働紛争は、個別労働関係紛争のみです。
賃金・解雇・出向・配属に関することなどの労働契約及び、職場内でのいじめ・嫌がらせなどその他の労働関係に関する事項についての個々の労働者と経営者との間の紛争が「あっせん」の対象となります。
つまり、労働組合と事業主との紛争や、明らかな労働基準法等の労働関係法上の法規違反や労働者と事業主との間における私的な金銭賃金問題等は対象にはなりません。

また、「あっせん」は、経営者と労働者に、それぞれの意見を別々に聞いた上で、経営者と労働者が直接対面することなく、適切な和解案を提案し、話し合いをもって和解を目指すものですので、双方が納得した上での解決が図られます。

あっせんと裁判の違いを簡単にまとめると以下のようになります

裁判)
・どちらかが勝ったか、負けたかで決定する
・長期に渡る
・費用が高い

あっせん)
・話し合いで和解を目指す
・短期で解決
・費用が安い

「あっせん」は、受付日から概ね1か月以内に「あっせん」する日が決まり、原則として1回(1日)の手続きでトラブルを解決しますので、経営者と労働者の双方にとっても利用しやすい制度です。

「あっせん」は、労働問題に精通した特定社会保険労務士(特定社労士)が対応します。
内容によっては、弁護士の助言や同席もあり、個別事案によって適切な和解案を、特定社労士が提案します。

ちなみに、あっせん申立て費用は、1,080円~10,800円で設定されていて、裁判と比べれば格段に安いです。

労使トラブルが起こらないことが一番ですが、万が一トラブルに発展した場合でも、裁判になる前に、「あっせん」で解決することが出来れば、労使共に望むところではないでしょうか?

労務トラブルを防ぐための事前対応はもちろん、トラブルになった場合の「あっせん」についても、社労士(特定社労士)にご相談ください。

職場のトラブルを解決するには、「裁判」や「あっせん」といった方法があります。
これまでは職場のトラブルを解決するには、裁判で解決するのが一般的でした。裁判による解決は多額の費用や時間を費やし、裁判内容が一般公開されますので、労使間の紛争当事者が互いに辛い思いをすることも考えられます。
このため、労働問題において裁判による解決はあまり有効に機能してこなかったと言えます。
そこで、裁判をせず、話し合いによって、自主的にトラブルを解決しようという制度(個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律)が平成13年に成立し、労使間のトラブルを簡易・迅速・低廉・円満に解決(あっせんによる解決)することができるようになりました。最近では、裁判によらない解決手段として裁判外紛争解決手続きが活用されています。
裁判外紛争解決手続はADRと呼ばれ、行政型ADRと民間型ADRがあります。労働問題の行政型ADRとしては、各都道府県労働局に設置されている紛争調整委員会と都道府県労働委員会などの個別労働関係紛争解決機関があります。また、民間型ADRとしては、全国社会保険労務士会連合会及び各都道府県社会保険労務士会に設置されている社労士会労働紛争解決センターがあります。
社会保険労務士のなかでも、特別研修を修了し、紛争解決手続代理業務試験に合格した者は、特定社会保険労務士として、このあっせんに関する業務に関する手続の代理業務(紛争解決手続代理業務)をすることができます。

特定社会保険労務士が行うあっせんには以下のものがあります。

・厚生労働大臣が指定する団体が行う裁判外紛争解決手続の代理
(紛争価額が120万円を超える事件については弁護士との共同受任が必要となります)
・個別労働関係紛争解決促進法に基づき都道府県労働局が行うあっせんの手続の代理
・男女雇用機会均等法、育児・介護休業法・障害者雇用促進法及びパートタイム労働法に基づき都道府県労働局が行う調停の手続の代理
・個別労働関係紛争について都道府県労働委員会が行うあっせんの手続の代理
・上記代理業務には、依頼者の紛争の相手方との和解のための交渉及び和解契約の締結の代理を含む。
あっせん制度は、個々の労働者と使用者との間で発生した労働条件や雇用に関するトラブルで、双方の主張が対立し自主解決が困難となった事案に関し、あっせん委員が第三者の立場に立って、当事者双方からの話を聴き、問題点を整理の上、助言等を行い、歩み寄りによる解決の援助を行なう制度です。

裁判とあっせんについてまとめますと、

・裁判に比べて時間と費用がかからない
裁判の場合、比較的長い時間を要しますが、あっせんの場合、解決までの時間が早く、費用は裁判に比べて安く利用できます。
・非公開
あっせんの場合、裁判と異なり非公開なのでプライバシーが保護されます。
・相手方と顔を合わさずに済む
あっせん当日は労働者と会社側は別の部屋に待機し、専門家があいだに入り互いの主張を伝えます。
・不利益取扱いの禁止
労働者があっせんの申請をしたことを理由として、事業主が労働者に対して解雇その他不利益な取り扱いをすることは法律で禁止されています。

労働問題を解決しようと思う場合、裁判という方法が思い浮かぶかもしれませんが、必ずしもそれだけではありません。あっせんは裁判に比べ費用を安く抑えられる可能性があり、解決までに時間をかけずに済み、労使お互いが納得した上での解決が図れる可能性が高いです。労働問題が起きないようにすることが一番だとは思いますが、万が一に備えて、裁判以外の方法もあるということを覚えておいて頂ければと思います。

ブラック企業という言葉が一般的になり、ニュースなどでも聞かれるようになりましたが、企業側は企業側で悩みがあるものです。

社員がSNSで問題発言をする、休職を繰り返す社員がいて他の社員の不満になる、突然急な退職を申し出てきて、有休も取りきりたいと言う、能力不足で辞めてもらいたい社員がいるが、一般に解雇は難しいと聞く……等々、どれも、めずらしいお悩みではありません。

どこかに相談したいけれど、行政に相談したらこちらが指導を受けたりしないか?といった不安をお持ちの経営者も中にはおられるのではないでしょうか。

一般論ではなく、まさにいま自分の会社がどうしたらいいのかが知りたい、うちにも言い分がある、というお気持ちもあるかと思います。

突然困った事態になったときも、顧問契約している社労士がいると安心です。

顧問契約をしていると、社労士側も、顧問先の企業がどんな会社様なのか、トラブルはどんなものが起きやすく、どういったところに強いか、おつきあいの中で把握していくことができます。

そのため、法律的な観点からはもちろんですが、企業の個別事情も勘案したうえで、どのように対応するべきか相談に乗ることができるでしょう。

しかし、ひとつの事例に対処ができたとしても、同じことがまた起こらないようにすることが大切です。

そのためのルール作りや、もしも、企業側に法律上の不備があるなら適正にしていく方法、また、採用や教育のアドバイスや入社時にかわす書類の整備などにも社労士が役に立つことができます。

そして、中には法律上は問題がなくとも、時代に合っていない部分などもあります。

たとえば、現時点ではまだ協定を結べばおこなえる残業に時間制限はありませんが、とあるアンケートでは新入社員の最大80%近くが月30時間以上の残業を許容できないと回答しています。

企業としては、法律上問題がないしこのくらいはどこの会社でもしているだろうと思う範囲で残業をさせているつもりでも、従業員にとっては許容範囲を超えているということは、よくあるのです。

企業がこれが普通・悪くないと思う労働条件が、従業員にはあまり魅力的ではない場合もあるかもしれません。

少子高齢化で働き手が不足していくことになり、人手が足りないことを理由に廃業にいたる企業も増えていくと考えられます。

次から次へ採用が決まる時代ではなくなり、採用をしたら次に定着をしてもらわなければいけません。何もしなくても人が集まってくる買い手市場は終わっていますので、何かしていないと、すなわち対策をしていないと労働者の問題に悩まされる以前に労働者がいないということになりかねません。

聞いてもらっても打開してくれる人はいない、誰に聞いてもらったらいいかわからない労務の相談は、ぜひ社労士にお聞かせください。
従業員とのトラブルや問題行動などの悩みをいつまでも抱えておかず、解決して次の対策を考えましょう。

【社労士の業務って何があるの?】

まずは、社労士にお願いできる業務をまとめると以下のようになります。

企業からの依頼による従業員に対する人事雇用等、労務に関する相談・指導>
給与計算、各種(労働災害・社会保険(健康保険・厚生年金等)における私傷病、出産、死亡等)申請などの事務手続き、労働保険(労災保険・雇用保険)における申請等の事務手続き、労働保険料・年度更新に伴う算定納付諸手続き、社会保険料を確定させる算定基礎届の作成、労働者名簿及び賃金台帳など法定帳簿の調製、就業規則等の作成・改訂、賃金や退職金、企業年金制度の構築、各種助成金の相談、申請、労働安全衛生に関する相談、指導、社員研修、社員教育の実施、メンタルヘルス対策、労働に伴う相談、労使交渉等の紛争代理(特定社会保険労務士としての付記が前提) など

個人からの依頼による年金に伴う相談、申請代行(老齢、遺族、障害、離婚時分割等)>
医療保険各法、介護保険法等に基づく相談、申請代行(傷病手当金、高額療養費、要介護認定等)、労働に伴う相談、労使交渉等の紛争代理(特定社会保険労務士としての付記が前提)、行政協力という名目での下記 厚生労働省管轄下の公的機関での相談業務 労働基準監督署、公共職業安定所、年金事務所、街角の年金相談センター他

【企業にとって足りないもの、業績を上げるために必要なものを明確に!】

 中小企業の事業主様の中には、会社の業務だけをしているだけでは会社の業績を伸ばすにも限界があることを既に認識されている方が多いと思います。
 会社の内部の仕組みづくりから、その仕組みづくりの恩恵として国からの助成金などを獲得できることをご存じでしょうか。

 普段ふと思っていることはありませんか?

「社員がすぐにやめてしまうので高い離職率を下げることができたら……」、「社内の労使間での雰囲気が悪くてなんとか関係を改善できる方法はないだろうか……」、「ルールを明確にすることで社員のモチベーションを上げ、業績アップを目指せたらな……」
⇒ ① 社内規則や規定などを整備したい

起業直後の創業期のために少しでも資金が欲しいなぁ、あるいは異業種に進出を考えている等の理由で、何か返済不要の助成金があれば申請・受給したい
⇒ ② 助成金の申請・受給したい

 「昇給・昇格・賞与の違いは?」「ベースアップと定期昇給とは?」「同業他社の初任給や賃金水準を知りたい」「賃金体系をつくりたい」「能力給や年俸制、また成果給などを導入したい」
  ⇒ ③ 賃金制度を設計したい

「社会保険に未加入の社員がいる(特にパート・アルバイト)」、「社会保険事務所から調査が入り対応に困っている」、「毎月の社会保険料負担に苦しんでいる」など
  ⇒ ④ 社会保険を整備したい

 「定年後の高齢者を効率よく(安く)使えないかと考えている」、「優秀な人材を採用したい」、「あるいは逆にリストラを考えている」など
  ⇒ ⑤ ヒューマン・リソース・マネジメントについて相談したい

 他社の人事労務管理制度や人事労務関連の法改正情報を社労士から得たい
⇒ ⑥ 人事労務関連のトレンドが知りたい

 経営者として相談できる人がいない
  ⇒ ⑦ 渡辺事務所へ?

【社労士事務所を利用するときの注意点】

  以上、社労士にお願いしたいことを整理できたとしても、いろいろ分野があってどの社労士事務所に頼めばよいかわからないですよね……!?

 まず、会社のコンプライアンス的なものをきちんと整備したい(①社内規則や規定などを整備したい、③賃金制度を設計したい、④社会保険を整備したい)とお考えの方は、身近な知り合いに声をかければ、社労士事務所とつながりを見つけることができると思います。①③④については、よほどいい加減な社労士事務所でなければきちんと対応はしてくれます。

 次に、②助成金の申請・受給したいとお考えの方は、社労士事務所の選択は慎重にしなければいけないと思います。
 助成金は、国が進める取り組みを会社が整備し実施している場合に、一定の条件を満たした場合に受給できます。「整備」・「実施」というのがポイントです。「整備」というのは就業規則を初め、労使協定、労働条件通知書・雇用契約書などの社内ルールや会社と労働者との取り決めなどのことです。
一方、「実施」というのは国が求めているルール・書式に則って取り組みを行っていることです。
 助成金の目的を熟知したうえで就業規則を整備できているか、国が求めているルールや書式に則った取り組みをスケジュール通りに行っているかが重要となってきます。
 そして、それを証明するものが申請書類であり、書類の整合性をきちんと判断できるかどうかで助成金を受給できるかできないかが決まってきます。
 ですので、助成金の制度趣旨をきちんと理解して、事業主様に説明することができ、事業主様の負担をできるだけ最小限におさえた「整備」と「実施」のマネージメント、申請書類の作成ができる社労士事務所かどうかがポイントとなります。
 
 最後に、⑤ヒューマン・リソース・マネジメントについて相談したい、⑥人事労務関連のトレンドが知りたい、経営者として相談したいとお考えの方は、さらに社労士事務所を慎重に選択しなければならないと思います。
 いわゆる経営コンサルタントというもので、はずれを引いてしまった場合、事業の動向を左右する事態を生じかねますのでご注意下さい。例えば、適法性と妥当性の区別ができていないコンサルタントに相談すると気づいたら違法なことをしてしまっていたっ! などということにもなりかねません。
 まずは、ご自身が信頼できる人の紹介で知った社労士事務所に①から⑦のことをご相談されるのがよいかと思います。類は人を呼ぶといいます通り、ご自身の人的ネットワークを手繰り寄せたら一生パートナーとなれる社労士事務所に出会えるかもしれません。