月別: 2017年5月
◆企業での人材相談についての内容(社労士にできること)
企業経営における重要な要素として、「ヒト・モノ・カネ」の3つが良く挙げられます。その中でも社会保険労務士が専門とするのは「ヒト」。企業が成長・安定するためには「ヒト」の成長、つまり人材育成が必要不可欠であることは広く認識されているものの、具体的に何を行えばよいのかが分からないという方も多いのではないでしょうか?
●企業と求職者 雇用のミスマッチを防ぐためのお手伝い
「最近新入した社員が、1カ月も経たない間にすぐ辞めてしまった」、「新卒で入った社員の中に、無断欠勤が続いて連絡もつかなくなってしまった」という相談を受けることがあります。
中小企業の中には採用に特化した人事部を持たず、2、3回の面接で合否を決定せざるを
得ない会社も多くなっています。
たった数回の面接の印象で、企業と求職者がマッチするかどうかを判断するのは至難の業。結果、採用に至った人が、自社のイメージしていた人物と大きくかけ離れていたことはないでしょうか?
そんな企業と求職者のミスマッチを防ぐためのお手伝いとして、注目されているのが「適
正検査」。その人の特性や性格傾向、ストレス耐性などを判断するテストで、約20分~
30分程度で行えるマークシート方式のものが主流となっています。費用も2,000円~
3,000円程度のものが多く、診断結果もすぐに出るため、手軽に行えるものとして、入社
試験に取り入れる企業が増えています。また、入社時だけでなく、入社後の研修や配置転換など、あらゆる場面で活用できます。
●企業の運営を担う人材を育成するためのお手伝い
一声に「人材育成」と言っても、「研修にかかる費用もばかにならない」、「能力の高いスタッフに新人教育を任せたいが、本来の業務が手薄になっては困る」など、問題は様々。そんな時は、助成金の利用を考えてみてはいかがでしょうか?
社会保険労務士がご提案する助成金とは、一般的に厚生労働省が取り扱う支援金のことで、一定の条件を満たせば支給される返済不要の支援金です。
雇用保険の保険料を財源とするものが多いため、労働者の仕事の確保や、労働環境・賃金の改善について、一定の条件をクリアすれば支給されます。助成金を利用することで、人材教育にかかる費用を軽減することが可能です。
○人材育成に関する助成金(平成29年度)
・OFF-JT(業務の過程外で行われる職業訓練)に対する助成
・OJT(業務の過程内で行われる職業訓練)に対する助成
・セルフキャリアドック制度(キャリアコンサルティング)の導入に対する助成
・教育訓練休暇等制度の導入に対する助成
・人事評価制度の導入にたいする助成
上記は、人材育成に関する助成金の一部です。1つあたりの支給額が50万円以上になるものも多いため、人材育成に力を入れようという企業にとって大きなサポートになります。それぞれの要件や申請方法が異なりますので、助成金の利用をお考えの方は社会保険労務士にぜひご相談ください。
退職・離職に関するトラブル、相談件数は増加傾向
一度就職すれば定年まで勤め上げる。そんな話はすでに遠い過去のものになりつつあります。
求人倍率が高くなっているとはいえ、転職希望者は年々増加。転職することが不思議ではなくなりました。転職する方が増えるということを企業側から見れば、退職する方が増えるということ。すべてが円満退職であれば問題ないのですが、そんな甘い話はなく、退職・離職に関するトラブル、相談件数は年々増えつつあります。
時代背景として、働く個人の側から見ても情報がより収集しやすくなり、退職時に会社と争う姿勢を見せるという人も増えつつあります。企業側からすれば青天の霹靂。退職金、損害賠償請求やトラブル処理の工数増加により企業経営に影響を与えることも往々にしてありえます。
社会保険労務士に来る相談内容としては以下のようなものがあります。
・従業員から一方的に退職すると言われたが、どうすればよいか。
・中途入社したばかりの従業員が急に来なくなり連絡がとれず2ヶ月が経過。
・退職した従業員が、「解雇された」と主張している。
・退職した幹部社員が大量に従業員の引き抜きを行った。
・退職届を提出後に、有給休暇を使い切るために退職日を変更してきた。
日頃から従業員とのコミュニケーションを重視し、退職に関するトラブルを未然に防ぐことはもちろん重要なことですが、それでも退職トラブルが起こるリスクはゼロにはなりません。退職に関するトラブルを防ぐためのルール整備や退職金に関しては以下のような方法があります。
まずは退職のルールに関してですが、就業規則を作成するに当たり退職(解雇含む)に関する事項は、絶対的記載事項になります。つまり就業規則を作成するに当たり、退職のルールを設け明記することは必ず行わなければならないことになります。ただ就業規則の作成を義務付けられているのは常時10人以上の労働者を使用する企業に限られています。しかしトラブルを未然に防ぐのであれば、労働者の数が10人未満でも就業規則を作成することをお勧めします。退職に関するルールの詳細は企業ごとに異なりますので、ぜひ社会保険労務士にご相談ください。
続いて退職金ですが、企業は退職金制度を作らないといけないといったルールはありません。しかし世の中の企業の8割以上が退職金制度を設けており、その数は中小企業に絞ってみても同様に劣るものではありません。従業員が安心して働けるポイントにもなりますし、定着率もよくなり企業にとってメリットが多いのも確かです。
ただし、メリットが多いからといって安易に導入してよいものではありません。導入した以上は労働基準法により、賃金の後払いの性質を帯びることになりますので、不払いになると違法になり罰則の対象にもなります。
企業が退職金の導入にあたり資金繰りの悪化を避けるためには、積み立てを確実に行うことがポイントになります。これを自力でやろうとすると資金繰りが悪化した際に手を出してしまうことになるので、中小企業退職金共済や外部の生命保険会社等を利用し確実に積み立てを行うことで、資金繰りが悪化するリスクを回避することができます。また退職金規定に関するルールも、退職金が適正な水準になっているか、シンプルで分かりやすいルールになっているか等、定期的にチェックすることをお勧めします。
退職時のトラブル、退職金に関する企業側の悩みは、質量ともに今後ますます大きくなることが予想されます。退職者を不必要に増やさないためには、従業員がいかに定着するかがポイントになります。従業員の定着率を高めるためには従業員が納得できる人事評価制度を運用し、コミュニケーションを密にとっていくことが重要になります。人事、労務の両方に強い渡辺事務所に是非一度ご相談ください。
社労士にお任せできる仕事
社会保険労務士という名前を聞いてどれぐらいの方が仕事内容をイメージできるでしょうか?
恐らく多くの方がその仕事内容についてイメージがつかないのではないでしょうか。
弁護士であればあらゆる法律のプロ、税理士であれば税金関係の法律のプロ、社会保険労務士は人に関係する法律のプロになります。
社会保険労務士は、会社設立から事業の廃止(倒産)、従業員の採用から退職(解雇)までの間に必要な労働・社会保険の諸手続きのすべてを事業主に代わって行うことができます。また、年金(国民年金、厚生年金保険)裁定請求手続きや、業務上や通勤中に発生する労災保険の給付申請手続きなどの事務を行います。
また、企業の人事や労務に関するコンサルタントとしても活動しています。社会保険労務士法では、「事業における労務管理その他の労働に関する事項及び労働社会保険諸法令に基づく社会保険に関する事項について相談に応じ、又は指導すること」を社会保険労務士の仕事のひとつとして定めており、社会保険労務士が労務管理の専門コンサルタントであることを認めています。社会保険労務士は、人事・労務管理上の諸問題の相談を受け、企業の実情に応じて適切なアドバイスを行います。近年の多様化する雇用形態の中では、労働に関するトラブルが絶えず、コンサルタントとしての役割も重要になってきています。
では、具体的にどのような事ができるのかみていきましょう。
仕事の内容としては大きく分けると以下のようになります。
〇1号業務、2号業務
労働社会保険諸法令に基づく書類の作成、手続き代行
〇3号業務
人事や労務に関する相談業務
1号業務・2号業務について
行政官庁に提出する届出書、申請書、報告書、審査請求などの書類を作成する業務、企業の就業規則、労働者名簿、各種労使協定、賃金台帳などの書類を作成する業務は1号業務とよばれています。また、1号業務で作成した申請書などを、社会保険労務士が事業主に代わって、行政官庁に提出することや、事業主に代わって、行政官庁に対して陳述、要望、主張などを行なう業務は2号業務とよばれています。
3号業務
いわゆるコンサルティングといわれる業務で、人事や労務に関する相談や指導、アドバイスを行ないます。この3号業務には、法律の保護はありません。したがって、社会保険労務士でない人でも、自由に行うことができます。具体的な事例をあげてみましょう。
・人事評価制度の導入やアドバイス
・退職金制度の見直しやアドバイス
・賃金制度の見直しやアドバイス
・人材採用の助言・代行
・懲戒・解雇など問題社員の扱い
・定年制度・再雇用制度の見直し
・セクハラ規定の見直し
・個人情報の扱いの助言
・労働基準監督暑からの是正勧告の対応
・健康診断等労働安全衛生に関する助言
などを行っています。
会社が労働や社会保険関連の業務を行うにはかなりの時間と労力が必要となります。特に事業を始めたばかりだと慣れないことも多く、これらの業務にたくさんの時間を費やすことになるでしょう。これらの業務は社会保険労務士にアウトソーシング(外注)することができるのです。このような労務関係の知識に詳しい管理部門の従業員がいない場合、また事業が順調に進んで多くの従業員を抱えることになった場合など、社内ではその業務だけに時間が多く掛かることにもなるでしょう。そのような場合は社労士への外注が有効になります。
これら労働や社会保険、各制度の手続きや社内の体制を整えることは、高い専門知識を持って行うことが求められます。社会保険労務士はその知識を十分に持っていると国家に認められていますから、安心して様々な相談を行うことができるというわけです。